駐車場の無い神童寺。
山奥に佇む古刹はアクセスと駐車場に多少の難はありますが、それ故に穴場であり、貴重な仏像も揃う素敵なお寺だと気づかされます。
蟹満寺の境内で「京都南山城古寺探訪」の小冊子を手にし、まだ訪れたことのない神童寺を目指します。お寺の名前から神童と何か関係があるのかなと思いながら、細い山道を車で登って行きます。
神童寺本堂。
室町時代に再建された本堂は、国の重要文化財に指定されています。この本堂内に、ご本尊の蔵王権現像と前鬼・後鬼の三尊像が祀られています。
役行者も修業した北吉野山神童寺
「神童寺縁起」によれば、神童寺は596年に聖徳太子によって創建されています。
神童寺の名前の由来は、役行者がこの山で修行した時に、二人の神童の助力を得て蔵王権現像(本尊)を刻んだことに因みます。神童がご本尊を刻んだことから、神童寺という命名になっているわけですね。
山門左手前に「北吉野山神童寺」と刻まれた石標が建ちます。
山号を「北吉野山」と号するところに、金峯山寺由来の山岳仏教の影響を感じさせます。一時は付近の山一帯に26ものお堂が存在していたと伝えられます。残念ながら全て焼失の憂き目に遭いますが、応永13年(1406)に現在の本堂が再建されています。
吉野の吉水神社書院において、役行者像と二匹の鬼の像を拝観したことがありますが、神童寺にもよく似た仏像が祀られていることを知り、どことなく親近感を覚えます。
本堂内や本堂裏手の収蔵庫に納められた仏像群を拝観しようと思ったのですが、背後に「プ~ッ!」という車のクラクションの音を耳にしました。咄嗟に、私の駐車した車に対する警告音だと判断し、慌てて境内を出ます。
神童寺拝観の前に訪れた蟹満寺。
実は私が神童寺に到着した時、既に山門前には一台の車が駐車していました。
駐車するスペースが見当たらなかったので、仕方なく山門前を左折して細い道を登って行きました。どこにも適当な駐車スペースが見当たらなかったため、細い道の片隅に車を停めて、急いで神童寺に舞い戻って、さぁこれから参拝しようと思っていた矢先のことでした(笑)
神童寺山門。
最寄り駅からの所要時間にも、アクセスに不便な立地がうかがえます。
JR奈良線の東側に位置する神童寺。地図をチェックすると、JR棚倉(たなくら)駅とJR上狛(かみこま)駅の中間点ぐらいにあり、最寄り駅は北側のJR棚倉駅になります。なんと所要時間は40分と言いますから、やはり車でアクセスする人の方が多いのではないでしょうか。神童寺から見て、北東方向には国宝の五重塔で知られる海住山寺、南東方向に浄瑠璃寺や岩船寺、そして北西方向に蟹満寺が佇みます。
神童寺の本堂脇に建つ、鎌倉時代の十三重石塔。
ゆっくりと境内で過ごすことはできませんでしたが、山深い地にひっそりと佇む本堂を見て心が癒されました。アクセスに不便であるが故の美しさをそこに見出すことができたのです。いつまでもこの場所に、その姿をとどめ続けていてほしいと思います。