春日大社内院の北西に鎮座する椿本(つばきもと)神社。
椿の木がこの付近にあったことから、椿本神社と呼ばれるようになったと言われます。春日大社の末社で、後殿御門のすぐ西側に鎮まります。
椿本神社。
御祭神・角振大神(つのふりのおおかみ)は春日神の眷属の神様とされます。角振隼総明神(つのふりはやぶさみょうじん)とも呼ばれ、奈良市角振新屋町の隼神社にも祀られる神様です。
攘災招福の御幣を奉納
隼明神という名前を聞いて、飛翔スピードの極めて速い隼(ハヤブサ)が頭をよぎります。
椿本神社のすぐ南方には風の神・風宮神社が祀られています。なぜかこの場所に立っていると、”疾風の予感” がするのは私だけではないような気が致します。
椿本神社の案内板。
御祭神は角振神(つのふりのかみ)で、魔物を祓う御神徳で知られます。例祭は毎年5月2日に執り行われているようですね。由緒も記されていますので、以下に抜粋致します。
鎌倉時代に成立した「春日権現験記」に関白藤原忠実公の御殿に忍び込んだ天狗法師(魔物)を御祭神の霊威によって追い払う話が見える。
古来魔物(天狗)退散除災の神様として信仰されている。
春日権現験記(かすがごんげんけんき)とは、藤原氏の氏神である春日神の霊験を描いた絵巻物です。春日神社造営の様子も描かれた、大変貴重な歴史的資料として知られます。
春日大社中門と御廊。
手前左側の大杉は樹齢800年~1,000年を数える御神木です。
春日大社で執り行われる結婚式の際には、この大杉の横で記念撮影されることが多いようです。
椿本神社御幣。
「攘災招福(じょうさいしょうふく)」と記されていますね。御幣の奉納料は200円のようです。
攘災とは災いを除くことを意味します。この難しい「攘(じょう)」という漢字ですが、幕末の尊王攘夷論で習った記憶が蘇ります。攘夷(じょうい)とは外国人を撃ち払って入国させまいとする、当時の鎖国を主張する考え方ですよね。
国際的に開かれた今の日本からは考えられない攘夷論なわけですが、その「攘」と同じ「攘」が使われています。攘災招福・・・この御幣を玄関口に掲げておけば、その効果は絶大なのでしょう。
「莚」の文字が浮かび上がる多賀絵馬もありました。
椿本神社の西側に祀られる多賀神社は延命長寿の神様として知られます。
椿本神社の後方には重文の藤浪之屋が控えています。2月節分とお盆シーズンの8月14日・15日に行われる春日万燈籠が再現されています。幽玄な世界が広がり、ちょっとしたテーマパーク気分が味わえます(笑)
それにしても、春日大社にはたくさんの摂末社が存在しているんですね。椿本神社参拝で改めてそのことを感じた次第です。