南禅寺金地院の特別拝観『猿猴捉月図』

実体の無いものに心を奪われてはいまいか?

過去を遡れば、誰しも心当たりのあるところでしょう。”身の程知らずはいずれその身を滅ぼす” という教訓が一枚の襖絵に込められていました。場所は京都の南禅寺・・・言わずと知れた東山山麓の禅寺です。その塔頭の一つに金地院というお寺があります。金地院方丈の小書院襖絵に、『猿猴捉月図(えんこうそくげつず)』と題する長谷川等伯の作品が展示されていました。

南禅寺金地院の特別拝観券

金地院の特別拝観券。

重要文化財の猿猴捉月図「老松」長谷川等伯筆。

水面に映る月を取ろうとする猿が描かれています。随分手の長いサルですね。それもそのはず、この猿は当時日本に居なかったテナガザルなんだそうです。頭の中の想像で描かれた猿です。目鼻口が顔の真ん中に集まって、なかなか愛嬌がありますね。

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茶室八窓席と長谷川等伯の襖絵

私が金地院を訪れた時、たまたま特別拝観の期間中でした。

東照宮や鶴亀庭園の他にも、大方丈内の襖絵や茶室が特別公開されていました。

南禅寺金地院

南禅寺塔頭の金地院。

勅使門の右手前にあり、南禅寺の拝観では一番先に目にする建物ではないでしょうか。

金地院の歴史は応永年間(西暦1400年前後)に遡ります。大業徳基禅師が足利義持の帰依を得て、京都北山に開創した禅宗寺院に端を発します。そこから時は下り、慶長初め(西暦1600年前後)に崇伝和尚が南禅寺塔頭に移建して現在に至ります。

特別拝観案内

特別拝観の案内。

拝観時間は9時30分~15時30分までのようです。

小堀遠州作の茶室・八窓席の写真も掲示されていました。京都三名席の一として知られる八窓席は寛永4年に作られているようです。八窓席も重要文化財に指定されており、外縁のあるにじり口や高い茶道口を特徴とします。

金地院の拝観受付

門を入ると右手に拝観受付がありました。

金地院の拝観料は400円ですが、特別拝観を希望する場合は別途特別拝観料が必要です。

迷わず特別拝観チケットを購入し、左手の明智門から院内へと入って行きます。

明智門から弁天池の畔を歩き、徳川家ゆかりの東照宮へ辿り着きます。そこから石段を下り、特別名勝の鶴亀庭園へと向かいます。

鶴亀の庭園

左手が方丈、右手に広がる枯山水が鶴亀の庭園です。

特別拝観にはガイドが付くため、あらかじめ決められた時間内に方丈に居る必要があります。

10分ほど前に到着し、しばし小堀遠州作の名園に身を委ねます。

南禅寺法堂

こちらは南禅寺の法堂です。

広大な敷地を誇る南禅寺ですが、西から東へ勅使門、三門、法堂、方丈が一直線に並んでいます。南禅寺三門は石川五右衛門の名台詞「絶景かな」でも知られ、南禅寺を代表する建築物ですが、こちらの法堂も実に見事な建物です。

金地院方丈

再び金地院の方丈へ。

金地院の拝観リーフレットにも、猿猴捉月図が案内されていました。

竹を割いて作った筆で描かれているようです。近寄って見ると、一本一本の毛並みが硬筆タッチで描かれているのが分かります。そもそも猿猴捉月とは、僧祇律の寓言に由来します。猿が水面に映る月を取ろうとして溺死したように、身の程を知らぬ者は命を失うという戒めに引用されます。猿猴捉月、もしくは「猿猴が月」とも言います。

猿猴捉月図

器用そうに見える猿ですが、この後溺れてしまうんですね。

猿猴捉月図の他にも、方丈内ではカラスを描いた屏風絵も展示されていました。

現代は嫌われ者のイメージが強い烏(からす)ですが、昔は崇拝の念すら抱かれていたようです。時代が変われば、人の抱く印象も変わるものなのですね(笑) 劇画風に活き活きと描かれたカラスを見ていると、その時代に生きた人々の思いが伝わってくるようです。

猿猴捉月図

老松の絵も立派ですね。

老松は末永い繁栄を願う象徴でもあります。

南禅寺水路閣

南禅寺のシンボル・水路閣に半券をかざします。

レンガ造りの水路閣は、琵琶湖疎水を通すために作られています。この辺りは紅葉の名所にもなっており、時の流れを感じさせる人気の観光スポットとして知られます。

金地院東照宮

権現造の東照宮。

拝殿天井には、狩野探幽の「鳴龍」が描かれています。

さらに東照宮の本殿には、徳川家康の遺髪と念持仏が納められているそうです。京都で東照宮に出会えるなんて、思ってもみませんでした。

南禅寺拝観の際には、塔頭寺院に注目してみるのもいいですね。

金地院以外にも、紅葉ライトアップの天授菴、夢窓疎石の池泉回遊式庭園で人気の南禅院などがあります。