お寺に参詣すると、びんずる尊者によく出会いますよね。
漢字表記では、賓頭盧尊者と書きます。
山の辺の道の弘仁寺に坐すびんずる尊者。
本堂の中ではなく、外陣に座っておられます。
なぜなのか?
学校に遅刻をして教室の廊下に立たされる生徒、あるいは悪戯をしてベランダに締め出されるわんぱく坊主(笑)
びんずる尊者が本堂の外陣に坐しておられる理由は、遅刻をした生徒やベランダに出された悪ガキと大して変わりはありません。
釈迦の弟子だった賓頭盧尊者
びんずる尊者はお釈迦様の弟子なんです。
なかなか立派な人だったのですが、どういうわけかお酒には目がなくて大の酒好きでした。お釈迦様に内緒でちびちびやっていたというわけです(笑)
お釈迦様にたしなめられて禁酒を決意するのですが、厳しい行の後、我慢の限界だったのかお酒に手を出してしまいます・・・。
誘惑に負けたびんずる尊者はお釈迦様の近くには置いてもらえず、遠くへ放り出されてしまいます。
壷阪寺のお釈迦様の涅槃像。
多くの弟子たちに囲まれていたお釈迦様。
遠くへ放り出された後、びんずる尊者は反省をして黙々と修行に励んだと伝えられます。
びんずる尊者の改心を知ったお釈迦様は、せめて本堂の外陣でなら・・・ということで、再びお釈迦様の元で修業を積むことを許されたそうです。
現在のびんずる尊者が、赤い顔をして本堂の外陣に座っておられる理由が分かりましたよね(笑)
壷阪寺のびんずる尊者。
お釈迦様の弟子で、特に優れた代表的な16人の弟子を十六羅漢といいます。
びんずる尊者は十六羅漢の一人に数えられます。
初めての経典編集に集まった弟子たちのことを五百羅漢といいますが、五百に比べて十六ですから、その少数精鋭ぶりがうかがえます。
一度は悪に染まり、そのことが原因でより深い善に目覚める。
世間でもよくあることですよね。
興福寺の南円堂前にもびんずる尊者は坐しておられますが、びんずる尊者はご存知のように撫で仏です。
自分の体の中の悪い所を撫でると快復に向かうと信じられています。
深く反省をして復活を果たしたびんずる尊者にあやかろうというのでしょうか。
学校の先生、小さい子を持つ親、お釈迦様に共通する点は、深い愛情を持って接していることではないでしょうか。
びんずる尊者に秘められた真善美に向かう復活のエネルギーが、私たちの願い事を受け止めてくれているような気がします。